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ゼロから理解するTransformer — 予備知識なしで読めるLLMの仕組み

本書は、ChatGPTなどの 大規模言語モデル(LLM: Large Language Model) の中核にある Transformer(トランスフォーマー) という仕組みを、数学・統計・機械学習の予備知識がない人でも理解できるように書いた解説書です。

本書の方針

Transformerの解説は世の中にたくさんありますが、多くは「ベクトルの内積は知ってますよね」「勾配降下法は前提です」という調子で始まります。本書は逆に、「その知識を理解するには何が必要か」を芋蔓式に遡り、必要な知識をすべて手前の章で解説してから先に進みます

  • 前提とするのは 中学数学 + 文系高校数学の基礎 だけです
  • ベクトル・行列・微分・対数・確率分布は、本書の中でゼロから解説します
  • すべての数式に 日本語の読み下し小さな数値での手計算例 を付けます
  • 文字だけでなく 図・表・数式 で視覚的に説明します
  • 分量よりも「理解できること」を優先しています。急がず順番に読んでください

NOTE

本書の図は Mermaid 記法(GitHub や VS Code でプレビューすると図として表示されます)を基本とし、構成図はフローチャート、関数のグラフや確率分布は折れ線・棒グラフ(xychart)で描いています。ベクトルの矢印や行列のレイアウトなど、Mermaid で表現しにくい一部の図だけテキストの図で載せています。数式は LaTeX 記法($$ ... $$)で、GitHub / VS Code のプレビューで数式として表示されます。

目次

第I部 基礎編 — 数学と機械学習の土台

タイトル主な内容
第1章数学の準備(1)— 関数と記号に慣れる関数 f(x) 、指数・対数、 Σ 記法
第2章数学の準備(2)— ベクトルと行列ベクトル、内積=類似度、行列積
第3章数学の準備(3)— 微分・勾配・確率傾き、勾配、連鎖律、確率分布
第4章機械学習入門損失関数、勾配降下法、過学習
第5章ニューラルネットワーク層、活性化関数、softmax、交差エントロピー

第II部 入門編 — 言葉を数にしてTransformerへ

タイトル主な内容
第6章言葉を数にするトークン化、埋め込みベクトル
第7章Transformer前夜 — RNNの栄光と限界言語モデル、RNN、seq2seq、attentionの誕生
第8章Attention徹底解説【本書の山場】Q/K/V、self-attention、multi-head、マスク
第9章Transformerの全体像位置エンコーディング、残差接続、LayerNorm、FFN

第III部 応用編 — LLMの世界へ

タイトル主な内容
第10章Transformerを訓練する自己教師あり学習、次単語予測、パープレキシティ
第11章三つの系譜 — BERT・GPT・T5エンコーダ型/デコーダ型/両方型の使い分け
第12章LLMから対話AIへ指示チューニング、RLHF、DPO
第13章スケーリング則と創発べき乗則、Chinchilla、創発的能力
第14章文章を生成する仕組み自己回帰生成、温度、top-k/top-p
第15章高速化・効率化の技術KVキャッシュ、RoPE、量子化、LoRA、MoE
第16章まとめと次の一歩 + 用語集全体の振り返り、FAQ、学習ロードマップ

知識の依存マップ — なぜこの順番なのか

本書の章立ては「その章を理解するのに必要な知識が、必ず手前の章で手に入っている」ように設計されています。矢印は「→の先を理解するために必要」という意味です。

読み方のガイド

  • 初心者の方: 第1章から順番に読んでください。飛ばさないことを強くおすすめします。各章は前の章の知識を当然のように使います。
  • 高校理系数学(ベクトル・微分)に自信がある方: 第1〜3章は流し読みで、第4章から本格的に読み始めても大丈夫です。ただし第2章の「内積=類似度」の節だけは必ず読んでください。この見方は本書全体で繰り返し使います。
  • 機械学習の経験がある方: 第6章または第7章から読み始められます。
  • とにかくTransformer本体だけ知りたい方: 第8章・第9章が本体ですが、第2章(内積)・第5章(softmax)・第6章(埋め込み)の知識を前提とします。

各章の冒頭には「この章で学ぶこと」「この章の前提」が、末尾には「この章のまとめ」「次の章へ」があります。迷子になったら章冒頭の前提リンクを辿って戻ってください。

本書全体を通しての問い

どの章も、最終的には次の一つの問いに答えるためにあります。

「猫は魚が___」の空欄に入る言葉を、機械はどうやって予測するのか?

この問いに自分の言葉で答えられるようになれば、Transformerを理解できたと言えます。それでは、第1章から始めましょう。

第1章 数学の準備(1)— 関数と記号に慣れる